無意識のうちに自分の頭髪を抜いてしまう症状。それが抜毛症です。
お子さんが抜毛症になってしまったら、親としては心配になるのは勿論、不安に駆られてしまうかと思います。
お子さん本人は勿論、家族全体での問題になります。
単にくせでついつい抜いてしまう…といった人も含めると抜毛症で悩む人は決して少なくありません。
また、一定の短期間で収まる人から長期的に悩んでいる方もいます。
まずは原因や特徴を知って、今出来るベストな対処法を一緒に考えていきましょう。
1.抜毛症の発症率は人口の1%~2%
2.発症する原因は年代によっても様々
3.抜毛症かも?と思ったらまずやってほしい6つのこと
3-2.逆に気をつけて欲しいこと
4.まとめ
1.抜毛症の発症率は人口の1%~2%
全人口の1~2%の人に抜毛症が発症すると言われています。
まずはそんな抜毛症とは何なのか確認しましょう。
①抜毛症とは何か
抜毛症とは体毛・頭髪を抜くことに没頭してしまい、周囲からも脱毛していることがはっきりわかるといった症状です。
別名「トリコチロマニア」とも呼ばれています。
また主に頭髪を抜くという症例が多いことから禿頭病(とくとうびょう)とも呼ばれています。
無理な力で抜いてしまう事で頭皮や毛根を痛めてしまい、その後の毛髪の成長に悪影響を及ぼす可能性もあります。
②実は少なくない抜毛症
抜毛症には、頭髪を抜く人以外にもまつ毛や眉毛、体毛など色んな部位の毛髪を抜いてしまう人がいます。
その中にも、意識的に抜いている人、無意識に抜いてしまっている人と様々です。
頭髪は抜いてしまうと目立ってしまいますが、体毛などを抜いてしまう人も多く、この症状を抱えている人は少なくありません。
また、多くの抜毛症の方は、人前では抜く行為をしません。
ですので、体毛など脱毛が目立たない抜毛症の方は、自分が抜毛症であることが分かっていない人も多くいます。
実際に分かっていても抜毛症であることを隠している人も多いのが現実です。
男女別では10:1の割合で女性の方が多いというデータがありますが、男性の場合抜毛症であることを隠している人も多く実際にはわからないという状況です。
③抜毛症は以外に身近な問題
私の中学時代の友人に、手の甲の毛を抜く癖がある人がいました。
髪の毛が膨らんでしまうのが嫌で抜いてしまう人や、眉毛が太くついつい以前からのクセで抜かないといられなくなる人など、結構身近に抜毛症を発症している人は多かったりします。
主な原因はストレスと言われていますが、見た目を改善したい一心で抜いてしまう人も含めると意外に少なくありません。
簡単な抜毛症のセルフチェックシートがありますので、親御さんから見てお子さんが抜毛症に当てはまるかどうか確認してみると良いかもしれません。
2.発症する原因は年代によっても様々
抜毛症の原因はストレスとされていますが、抜くこと自体に快感を覚えてしまい、癖になってしまっている人もいます。
一概に何が原因か、という事を特定することは現在においても難しい状況です。
また、年齢によっても原因が違ってくると言われています。 年齢別で多い原因を挙げてみましたので、お子さんの年齢と比較して確認してみてください。
-1歳未満-
1歳未満の赤ちゃんには、髪の毛がどういったものかという認識すらありません。
手に触れる髪の毛に興味を持って引っ張って見たり、もしかしたら痒みなどで無意識に抜いている場合もあるようです。
地肌に湿疹などあるようでしたら、それによる痒みが原因かもしれません。
意識的にストレスを感じて抜く、というケースはほとんどなく、抜毛症ではない事がほとんどです。
成長につれ髪の毛のことを認識するようになると症状はなくなりますので、心配する必要ないと言えます。
-1歳以上の幼児-
まだまだストレスを感じるには早い年代と言えますが、何等かで自分の思い通りにいかないときに髪を抜いてしまう事もあるようです。
例えば、覚えている言葉が思うように口に出ないケースや、家族に構って欲しい時などそういった症状を発症するケースもあります。
また、髪を抜いたときの痛痒い感じが快感になり、暇つぶしに抜いてしまうといったケースもあります。
-小学生-
小学生になると学校のお友達や先生との関わりが大きくなります。
また、勉強や習い事における悩みなども増えてきます。
そういった事に対する悩みやストレスから、毛髪を抜いてしまうというケースが多いです。
身体もぐんぐん成長していく時期ですので、身体の変化などに人知れず悩んでいることもあります。
上記のような悩みを家族にも相談できず抱え込んでいる可能性もあります。
-中学・高校生-
中学・高校になると異性への興味や失恋など、今までにない悩みも増えてきます。
学校以外にも塾やSNSなどによる新たな人間関係も増えてきたり、今では将来への不安など抱える中高生も少なくありません。
また、受験や部活動による過度なプレッシャーを抱えていることもあるでしょう。
以上のような理由によってやはりストレスや不安、プレッシャーから解放されるような気がして毛髪を抜いてしまう事が多いです。
また、この年齢は急激に自分の容姿を気にし始める時期です。
太い眉毛やぼさぼさの髪が嫌で抜き始め、気が付くと”抜く”という行為に依存してしまっていることもあります。
やはり、そういった悩みを家族や友達と共有できていない状況の子が多いようです。
-その他-
・ニキビと同じ? ニキビはつぶしてはいけないと思っていてもついついつぶしてしまう、そんな経験はありませんか?
それと同じでついついいけないとわかっていても抜いてしまう。
プチッと抜けたときの感覚が気持ちよく思ってしまうものです。
・やめなきゃいけないという思いが強すぎても “やめないといけない”と強く思い、でもまたやってしまったときの嫌悪感からやけになって更に抜いてしまうといったケースもあります。
大人で言う禁酒や禁煙に似ている部分もあります。
3.抜毛症かも?と思ったらまずやってほしい6つのこと
抜毛症は精神的なストレスがきっかけの場合が多く、その原因が明確にわからないこともあり、これをやれば大丈夫!という方法はありません。
悩みや不安の深さ・大きさにも差があります。
ただし、何かが本人のストレスとなっている事に間違いないので、それを発散・解消する方法を一緒に探していきましょう。
1、一人にしない
抜毛症には人のいないところで抜いてしまうというケースが多いです。
なので、出来る限り一人にしないことも大事です。
勿論、嫌々一緒にいさせるのも苦痛になり、逆効果にもなりえます。
可能な限り、無理強いしない程度に一緒にいる時間を増やしてみましょう。
2、手を使う趣味、遊びを覚えさせる
手がふさがっている状態では髪を抜くことはできません。
例えば、ゲームとか楽器、絵を描くなど手を使い且つ、夢中になれるものを考えてあげてみてください。
嫌なものは続きませんし、かえってストレスを増大させます。
もし本当に夢中になることができれば、髪の毛を抜くことに代わるストレスの発散方法にもなりえます。
可能であれば人と一緒にすることを見つけてあげると、親子関係も更に良くなり、些細な悩みなど打ち明けてくれるようになるかもしれません。
スポーツや手を使わなくても本人が好きになりそうなことを、勧めてあげてください。
3、病院に行ってみる
抜毛症は、本人も良いことでないことはわかっています。
親から子どもに「髪の毛を抜くのはいけない」というよりも、病院の先生からしっかりいけない事であると伝えてもらうと説得力が違います。
更に、医者にかかるほどの大変な事なんだと認識させることもできます。
そういった意味でも深刻な場合は病院での治療を検討してみてください。
診断・治療してもらえるのは精神科、心療内科、皮膚科になります。
ただ、治療を受ければすぐに治るものではないことは最初に認識しておいてください。
治療方法には以下のようなものがあります。
この療法では、『髪を抜きたい!』と思ったときにそれを食い止める方法・行動をとる習慣を身につけていきます。
その為に、まずは自分が髪の毛を抜いている事を事実として認識してもらいます。
治すべきことであるとしっかり理解してもらい、その上でどんな時に髪を抜いているのかを確認していきます。
更に、抜く前の感情、抜いた後の感情はどういったものか掘り下げて見極めていきます。
そして逐一髪を抜いた記録を細かく取っていきます。
ダイエットするときに、自分の食べたものを記録していくと良い、という事によく似ています。
そうして行動自体の意味を振り返り、『抜きたい!』と思った時に、今までとは別の行動を起こしていきます。
例えばウィッグを付ける、帽子をかぶる、指サックをするなど色々あるかと思います。
ゲームをする、でも良いですね。
そして何より大事なのが、家族でしっかり一緒になってフォローしていくことです。
ストレスや不安から抜毛している子には非常に有効な治療法ですが、家族のフォローがないとあまり効果が期待できない方法でもあります。
髪を抜く癖を治すため、違う癖を覚えさせる方法です。
髪を抜きたい衝動にかられた際に、違う行動をするよう習慣づける。
上の認知行動療法の一部とも言えます。
心理的な事で抜毛している場合、根本の精神的な不安や脅迫観念を取り除くため薬を用いることもあります。
抗うつ剤や精神安定剤的なものを処方されます。
お子さんの場合、年齢によっては副作用を伴うこともありますので、しっかり医師と相談し決めてください。
4、トークン・エコノミー法を試してみる
医師に相談した際にもアドバイスされる方法の一つですが、髪を抜かなかった日、我慢できた日などをしっかり記録して、その対価(ご褒美)としてお子さんの喜ぶこと(モノ)をあげるといった方法です。
髪を抜かないことで良いことが待っているという状況を作ってあげるという事です。
5、環境を大きく変えてみる
原因が分からなくてはあまり大きな変化は難しいかと思いますが、学校での人間関係や部活動での不安・ストレスであれば、思い切って学校を変える、部活をやめる・・・といったことも選択肢の一つです。
症状の深刻さにもよりますが、トータル的にお子さんのためになるのであれば検討してみてください。
また、長期の休みを取って、海外旅行などで良い意味でのカルチャーショックを与え、物事の考え方などを根本的に変えてみるのも良いかもしれませんね。
一緒に田舎に1か月帰省して、リラックスして過ごすなどでも良いと思います。
野球、お芝居、ミュージカル・・・生の迫力は、特に今まで経験していないお子さんには大きく良い影響を与えることもあります。
何より、一緒にそういった経験をすることで親子関係もより良くなることは間違いありませんよね。
6、ウィッグを使用する
抜毛症の多くの人は、悪化した状態になると簡単に元に戻らないという諦めが大きくなり、やけになって更に抜き進めていく人も多いです。
見た目を素早く直し、髪の毛があるってこんなに素敵なことなんだ、と思ってもらうにはウィッグが最適です。
そしてウィッグをつけるのが習慣づくと、頭皮・頭髪を覆ってくれますので抜毛を防止するという効果も期待できます。
勿論帽子などでも問題ありませんが、見た目を一気に改善することでモチベーションを上げる意味ではウィッグの方が効果的かもしれません。
見た目、特にヘアースタイルは大きく気持ちを前向きにしてくれる効果があり、円形脱毛症などの改善にもつながると言われています。
私も実際にそのようなお客様を何人も対応させていただきました。
『人生が変わりました・・・』と涙ながらに感謝していただいたことも多くありました。
自然で素敵なヘアースタイルを再現できるウィッグにはそんな力もあります。
3-2.逆に気をつけて欲しいこと
治すことも大事ですが、それ以上にやってはいけない事があります。
いくら治す行為をしてもマイナスになることもありますので、以下の点には充分注意してください。
・怒らない
いくらやめるように言ってもやめない。
これが続くとついつい怒ってしまう事もあると思います。
ですが、怒られることが恐怖になり更に悪化することもあります。
また、怒ることで一時的に治ったとしても、再発した際に更にひどい状態になることもあります。
ダイエットのリバウンドのように無理に我慢することでその反動が大きくかえってくることも少なくありません。
大きな心で受け止めながら接するようにしてください。
いけない事・やめなくてはならない事を、怒ること以外の方法でしっかり伝える努力をしてください。
・深刻にならない
少し乱暴な言い方ですが、抜毛症だからと言って命に係わることはなく、激しい痛み・かゆみ等が直接的に出る症状でもありません。
勿論、原因となっている心の悩み・ストレスは本人にしかわからない、もしかしたら本人にもわからないほど大きく深いものかもしれません。
あまりに親の方が不安になり深刻に受け止めすぎると、本人の不安を煽ってしまう事になります。
むしろ今まで以上に明るく、大丈夫!一緒に治していこうね、といった感じで対応してあげて下さい。
気にしない…というのは無理かもしれませんが、気にしすぎたところで何も良いことはありません。
・放っておかない
反対に、あまり大したことではない…と放っておくのは持っての他です。
色んな方法はありますが、本人任せにしないで、とにかく寄り添って一緒に克服していこうという姿勢で対応してあげてください。
抜毛症はお子さんの心の叫びの現れです。
お子さん一人で解決できないからこそ、表れている症状です。
一緒に抜毛だけでなく、心の悩み・不安・ストレスをほぐしてあげてください。
・過剰に薬に頼らない
子どもだけでなく、大人でも何か病気した際に薬に頼りきってしまう人は多いはずです。
特にお子さんの場合、過剰な薬の投与は悪影響を与えることも多いです。
抜毛症は基本的には心の病ですので、薬で簡単に治るものではありません。
先にも述べましたが、医師としっかり相談し、薬の種類・量を見極めていってください。
4.まとめ
抜毛症について色々とお話してきました。
何度も言うようですが、抜毛症を発症しているお子さんは何らかのストレス、悩みを抱えている確率が非常に高いです。
今までのお子さんとの関係、向き合い方を改めて見直してみてください。
愛するお子さんが悩みやストレスから解放され、見た目の問題も無くすには家族の助けが絶対に必要です。
抜毛症を乗り越えたとき、お子さんは今まで以上に強く優しくなれるはずです。
また、家族のきずなも間違いなく強くなると思いますよ。
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